鉄は熱いうちに打て!

ここはエモーショナルの墓場

2022-04-08『チェリまほ THE MOVIE』@TOHOシネマズ新宿

 本当は公開初日に観に行ってたんですけど(とんびを差し置いて……)、感想を書く前にいろんな人の感想に触れて、1回目頭使わずに観てしまったことをかなり反省しまして。

 その反省を踏まえて今日、今ちょっと気持ちが弱ってるのもあって殊更に涙を流しながら2回目を観てきたので、ようやく感想を書こうと思います。

 

 以下、前置きしておくと、ドラマ版は一応リアタイで全話追って、原作に関しては飛び飛びでつまみ食いしている人間の感想です。公開から2週間経ったのでネタバレも結構します。

 まず、ドラマの後ふたりはどうなったんだろう? と思った人間としては、その後のふたりの幸せそうな姿を見られて嬉しかったです。

 対黒沢に限らず、いつもおどおどして自信なさげだった安達が堂々と胸を張って過ごしているのも良かった。その変化も急激過ぎないというか、ドラマでの成長を踏まえ、この映画版で描きたかったこと(この先触れます)を自然に表現するためのものだったかなと感じています。

 黒沢は黒沢で、序盤は特に安達と気持ちが通じあってふわふわ浮かれているというか、尻尾を振っている大きな犬みたいで可愛かったです。今日2回目観て、この黒沢は安達が心を読めることを知っているわけだから、妄想に関してもわりとこう抑え目にしていたりするのかな、抑え目にして、あれなのかな? なんて微笑ましく思ったりしていました。

 そんな、順風満帆に思えたふたりの恋人生活に陰を落とす突然の安達・長崎転勤。

 安達は黒沢を、黒沢は安達を思うゆえにお互いの本心をきちんと伝え合えず、わずかにすれ違ったまま遠距離恋愛になってしまうふたり。ここは、黒沢を好きになったからこそ、彼の気持ちを慮りすぎてにっちもさっちもいかなくなってしまった安達と、もともとの気質に合わせて、大好きな安達に嫌われたくなくて自分の本心を抑え込んでしまう黒沢。ふたりの姿が対比になっていてとっても良かったです。どちらかが良いとか悪いとかではないすれ違い、という見せ方。

 そしてこの映画で一番キーになる出来事である安達の事故未遂。結局本人は過労で倒れただけ(だけってことはない。過労だって命の危険がある)だったわけだけれど、『事故に遭った』とだけ聞いた黒沢の不安たるや相当なものであったであろうことをしっかり伝えてくる演出と町田啓太の芝居が素晴らしかったし、その本心を聞き出した上で、こんこんと溢れてくる安達の黒沢への愛情をしっかり芝居で示し返して見せた赤楚衛二の芝居も本当に良かった。2回目は特に安達の台詞を聞きながらわかる……愛おしさ爆発するわこんなん……と思いましたね。

 あとここの一連の天気でのふたりの気持ちの表し方も良かった。オタクは天気でする感情表現が大好き。

 そこから安達が東京へ帰り、同棲のターンへ。東京へ帰ってきた安達の手を握ってブンブン振ってる六角が可愛過ぎて2回とも泣いた(……)。同棲開始のくだりは、ふたり(特に黒沢)がるんるんして舞い上がっているのが画に全開になってて笑顔が止まらなくなりました。

 からの、長崎での出来事を踏まえて決めた覚悟を黒沢に告げる安達の、悲壮なくらいの強さ。人さまの感想でも散見されたように、こんな形で彼が強くなる決意をしなければならない今の日本の社会構造ってなんなんだろう……と本当に首を傾げてしまいます。

 そこから両家へのご挨拶という流れで、この部分に関しては前後も含めてぜひ劇場で見てほしいのでここではあまり触れませんが、安達家も黒沢家もとても大切な言葉がたくさん散りばめられたシーンだったように感じました。どちらのおうちもご両親のお芝居が素敵だったな……。

 このあとあの部分は夢なんじゃないか? と言われている一連のシーンが来るのですが、私は初見では夢だと思わなくて、現実もこうやってみんなが受け入れてくれる優しい世界ならいいのに、くらいに捉えてました。で、夢なんじゃないかと言われているのを見たときにこう頭をガツンと殴られたような衝撃があって。でもそう言われて2回目を観たらその方が腑に落ちるし、そのあとのふたりのシーンの意味合いもより深まるんだなと思って本当に目から鱗でした。

 夢だと言われているシーンに関しては、あれが夢だと思えば思うほど、これが夢だとか夢じゃないとかいう考察をしなくて良くなる世の中になるようにしていかなければという気持ちにさせられて、ばかみたいに涙が出て止まらなかったです。

 2回観て、やっぱり手の演出が秀逸だなと改めて思いました。手のアップのシーンは彼らのこころそのものが現れていて、それが重なるときや近づくとき、一緒に空に向かってのばされるとき、彼らのこころも同じように重なって、近づいて、重ならなくても同じ動きをするようになっているのが分かって、グッと来るんですよね……。

 細かな部分で突っ込みたいところはいっぱいあったんですが(え?2022年の話なの?とか、豊川長崎支店の立ち上げに関するあれこれとか……)重箱の隅を突いてもしょうがないので、言わないでおきます! ドラマのときから変わらず、主軸として描きたいことをきちんと丁寧に誠実に描き切っていて安心しました。

 ドラマチェリまほの物語の中で安達が魔法を使えるようになって得た気づきはきっと、誰にでも心があるということ。だから相手の気持ちを考える、自分の気持ちをちゃんと伝える、当たり前のことだけど日々に追われて霞んでしまいがちなことに、観ている人間にも気づきを与えてくれていたなあと思います。

 それからこの映画に関しては、原作者の豊田悠先生が『映画化に伴いまして原作使用料の一部はMarriage For All Japanへ寄付させていただきました』とツイートされていたことも含め、誰もがあの夢のようなシーンを現実に出来るように、何か少しでも出来ることはないかと考えさせてもらえるいいきっかけをいただけたように感じます。

 性別関係なく好きな人を選んでこの先の人生を共にすることが尊ばれてほしい。心からそう願っています。

 なんか映画見てるあいだはもっと書きたいことがあった気がするんだけど、今すぐ思い出せないのでまた思い出したらどこかでぽつぽつ書きたいです。

 以上!

 メンタルが豆腐です! たすけて