僕と戦う人居ますか?──DISH//『X』10年目の宣戦布告に寄せて
週1回の更新続けられてるじゃん! 自分でもびっくり。そのくらいこう、日々にエネルギーを有り余らせている証拠ですね……
言いたいことが〜あるんだよ〜!(ガチ恋口上)とはよく言ったもので、何かを好きになると常にそのパッションを形作り、どこかしらにぶつけずには居られない、それがオタク。
さて今日のお題ですが、先日2月24日にめでたくリリースされましたDISH//4枚目のフルアルバム『X(クロス)』の全曲感想をつらつら書いていきたいと思います。
今までの記事で推しをぼかしてきた、というよりちょいちょい匂わせるだけで直接的な明言は避けてきたわけですけど。まあ勘のいい人はとっくに気付いてるでしょうからあえて書くことはしませんが、このアルバムのレビューをやるあたりで察していただけると助かります。
音楽的な知識はゼロなので雰囲気だけでレビューをするぞ!
このブログは何が好きなのかを主張して布教したいわけではなく、あくまで個人的な感情の記録にすぎないので。そのことを念頭に置いて読んでもらえると嬉しいです。
それでは張り切ってどうぞ! クロスフェードしか音源がない曲はそれぞれ再生スタートするところをリンク貼ってます。
1.ルーザー
今回のアルバムのリード曲、そして作詞作曲もメンバーが担当した意欲作。メンバー作の曲がアルバムのリード曲に採用されるのはDISH//史上初のことだそうで、それだけこの曲に対する揺るぎない自信やかける思いの強さが感じられる。多分それは本人たちだけじゃなくてスタッフもそういう思いでこれをここに据えたんだな、と思う。
“負け犬”の意であるタイトルの通り、曲全体にはどことなく屈折した雰囲気が漂っている。DISH//のこれまでと今がぎゅうぎゅうに詰め込まれた強さのある一曲。
作詞を担当したVo.北村匠海が出演作のアンダードッグがあったから書けたと語っていたけど、その言葉通り何度殴られても立ち上がりパンチを繰り出すボクサーの姿は、彼らが頭の中に思い描いているDISH//の歴史そのものと重なる。
ギターもキーボードもドラムもそして歌声も、すべてに力強さが満ち満ちている。『猫』があれだけはねて舞い上がるどころか冷静に地に足をつけて次の一歩を踏み出そうとする彼らの、ギラギラした感情。聴いていて胸がギュッとなるのは私だけじゃないはずだ。
今回の表題にも使用したラストサビ「宣戦布告を致します。僕と戦う人居ますか?」がただただ好き。この『僕と戦う人』という言葉が対戦相手にも共闘相手にも取れるのが良い。それ以外にもいろんな意味が詰まっている気がして、アルバム発売前の展覧会でこの詞を見た時は心の底からふるえた。
2.QQ(クイーンズ)
Key.橘柊生ディレクション、Nullbarichとのコラボレーション曲。
クロスフェードで試聴しただけでも判る通りサウンドは耳慣れたNullbarichのオシャレなそれ。そこへボーカルが橘柊生の書いた気だるげな詞を歌い上げ乗せていく。
柊生くんが詞を書いた曲といえばまだ勉強中の私でも知っている名曲『Loop.』『音花火』があって、それらでも広がっている柊生ワールドはこの曲でも健在。先にも書いたように気だるげで、ちょっと斜に構えているようにも見えて、でも軽妙。そこがとてもセクシーですてき。昼下がりと夕暮れのあいだみたいな雰囲気が彼の詞にはある。
「角なんか丸くしていい曲聞いて無くせよ」ってのがめちゃくちゃ好き。
各メンバーのディレクション曲はそれぞれボーカルの声との向き合い方に違いがあって趣深いなと思うんだけど、この曲は4曲の中で一番声を音として捉えている感じがする。楽器のひとつというのかな。聴いていて耳が気持ち良い。ラジオからこの曲が流れてきたら、その日は一日軽快に過ごせそう。
3.ニューノーマル
Gt.矢部昌暉ディレクション、緑黄色社会とのコラボレーション曲。はるやまのCM曲にもなってますね。
メンバーの中でも一番『ファン目線』『観客』の感覚を持っているという彼が普通というものの価値観を問い直すこの曲の担当というのはすごく興味深い。サウンド的には従来のDISH//から遠すぎず、エッジが効きすぎるわけでもなく、かといって変化していないわけではない。いい意味で万人に受け入れられる、人を選ばない一曲だと思う。これがCMのタイアップに選ばれた理由がよく解る。
個人的にこの曲の聞きどころはCメロの「もう普通を語るな もう普通に惑うな もう普通に逃げるな」のVoとChの掛け合い。
普段、北村さんの素晴らしいボーカル力が前面に出ているのでなかなか気づかれにくいが、私は昌暉くんのコーラスがとても好き。昔の曲からほとんど変わることのないハイトーンボイスはDISH//の武器のひとつだと思う。ふたりの声がユニゾンすると清涼感が半端ない。その魅力も存分に楽しめるのがこの曲で、初めて後半の掛け合いを聞いたとき嬉しすぎて叫んだ。
4.猫〜THE FIRST TAKE ver.〜
もはや説明不要。わたしのコメント、要るか? と思ったけど一応書いておく。
2017年『僕たちがやりました』のカップリング曲としてリリースされ、ファンの間では長らく人気の曲だったというあいみょん提供の『猫』。これを昨年THE FIRST TAKEで披露したところ現在1億回再生を超える大ヒット。DISH//がお茶の間に広く知られることになったきっかけ。
常に流行に対して斜に構えることしか出来ない人間のため、THE FIRST TAKEの動画は観ていてもこの『猫』は本当にごくごく最近まで観ていなかった。ちなみに今もLiSAのTFTは観てない。
ネガティブな感想が出る前に早めに切り上げるが、北村さん本人はこのときの完成度に納得がいっていないらしく、それを知った昌暉くんは「こいつバケモンかよ」と思ったそう。いや、ほんまそれな。
5.あたりまえ
昨年『猫』を元に作られた同タイトルのドラマのためにVo.北村匠海が書き下ろした一曲。劇中で実際に登場人物が弾き語ったりギターを教えるのに使う曲ということで簡単なコードで演奏できることを意識したそう。
『猫』がキミスイをインスパイアして作った曲なら、『あたりまえ』はキミスイの四次創作なんじゃね? と個人的には思っている。だから普通の失恋ソングというよりは、これもキミスイのイメージソングとして捉えるのが正解なのかなって。
『Shape of love』『PM5:30』に続く北村さん作のラブソングだけど、あれですね。どれも相手が今ここにいないことへの寂しさを「僕は寂しい」とは言わずに歌うのがずるい。あえてはっきりとその言葉を使わずに声だけで伝えようとしてくるの、ずるですよ。
シンプルな作品だからこそボーカルと演奏の表現力が問われる一曲だし、それに自ら応えてみせるDISH//はやっぱりすごい。
6.Seagull
みんな大好き『愛の導火線』の新井弘毅さんがこのアルバムでDISH//に書き下ろした新曲!! クロスフェードの時点でこの曲で回っている客席が想像ついた。タオルも回すし、多分客も回る。
オタクは制作側が想定している以上に4人ともがボーカルとして参加してる曲が好き。なのでもちろんこの曲も大好き。
あと一緒に皿を見てくれている友達と前から話していたのだけど、新井さんの曲ってハロープロジェクトのかおりがしませんか? 歌詞が音のノリ重視なところとか、とにかくノリノリになれるところとか。ライブでやったら絶対楽しい、って音源聞いてるだけでも解るし、なんならもうコールとか考え出しちゃうよね、みんな。
個人的にこの曲の天才だと思うところは「7thの音で晴れ爽快 9thの音で晴れ爽快」、これ“の音(おと)”と“ノート”をかけてますよね?!?!?!? “晴れ爽快”もたぶん“晴れそうかい?”とかけてあるし……やばくないか? 気づいたとき興奮して暴れちゃったよ。
春ツアーで聴けるかな、タオルぶん回したい。あと出来たら公式が振り付け出してくれるとすごく嬉しいです。
7.rock'n'roller
『ルーザー』に続きメンバー作の一曲。ルーザーと歌っているテーマは似通っているけど、もっとはっきり怒りとか反骨心とかそういうものがより色濃く燃えている感じがするのがこの曲。ドラムとベースの重低音がヒリヒリさせてくる。
メンバーたちが時折語る通りDISH//というバンドに改めて命を吹き込んだのはDr.の泉大智だと思うのだけど、この曲では大智くんも珍しくボーカルを担っている。彼がこの曲でマイクを担当することはバンドのDISH//にとってめちゃくちゃ意味があることだと思う。柊生くんのラップも入っていて、並ぶ言葉はいずれもわりと強め。タイトルがロックンローラーなのも納得。
初めて全部聞いたときの素直な感想は「これライブになったらヘドバンとか出来そうでいいな〜ちゃんと首鍛えておこう」です。
8.NOT FLUNKY
みんな大好きNOT FLUNKY! DISH//の楽曲をちゃんと聴いたのが前の記事で書いたエビライ2019だった私にとって、『NOT FLUNKY』はまじで親に近い一曲(真の親は『愛の導火線』、初めて曲名を覚えた曲なので)。いずれも新井弘毅作、いや本当に新井さんの曲はノれないものがないですね……たぶん聴いたら赤ちゃんでも踊る。
なんかもうこの曲に関してはアルバムが出る前から聴き込みすぎてていい感じの感想が全然出てこないんだけど、上に書いた通り初めて聴いた人でもすぐノれる、これってすごい強みだと思うんですよね。フェスとか対バンでこの曲がかかったら2番にはもう口ずさんだり、なんとなく身体を動かせるというか。
個人的にはサビ前のFLUNKY!!の直前の歌い方がセクシーやな〜〜〜って毎回思います。
9.君の家しか知らない街で
Vo.北村匠海ディレクション、サウンドクリエイターのくじらとのコラボレーション曲。
最近の流行りにまじで疎すぎてくじらくんについて全く知らなかったんですが、あの『春を告げる』も彼の作品なんですね。そう言われるとよりボカロPっぽいサウンドだな……という気がしてくる。
そういう先入観を一旦置いて純粋に曲だけを聴いたときの印象としては、まるで詩のリーディングみたいな曲だなあと。そう思っていたらくじらくん本人のコメントでもそういう感じのニュアンスで語られていたので安心した。
この曲の中の“私”はたぶん女性? なんだけど、不思議とこれまで北村さんが書いてきた詞の主人公の雰囲気とだぶるのは、歌っている人が同じだからなのか。それともそういう風に演じているのか。ただ、寂しい感じはあまりなくて、わりと淡々としているのも印象的。
6〜8曲目でブチ上げておいてここで一度トーンを落とす感じ、アルバムというかまるでライブのセットリストみたいですごく良い。
9.僕らが強く。
マカロニえんぴつのはっとりがDISH//のメンバーとの話し合いのもと書き下ろした一曲。昨年、コロナ禍初めての夏にリリースされ、全国の学生へ向けて楽譜の無償提供も行われたそう。
実はDISH//で一番聴いているのはこの曲だったりする。自分でも理由はよく解っていなかったけど、改めて聴いてみるとこの曲には「誰かにかけてもらいたかった言葉」がぎゅっと詰まっている気がした。もし去年リリース直後に聴いていたらそこで泣いてしまっていたかもしれない。
メッセージ性の高い曲というのは、ともすれば独りよがりになるか押し付けがましくなるかどちらかだと思っているのだけど、この曲に関しては去年様々な形で傷つき苦しんだ人たちのなかに歌っている彼ら本人も含まれていて、みんなおんなじ痛みを分け合った年だったんだなあと感じさせてくれる。
上手く言葉に出来ないけど、辛くなったときはこの曲を聴いて一頻り泣いたらまた前を向ける。そういう曲だと思う。
11.未完成なドラマ
Dr.泉大智ディレクション、GLIM SPANKYとのコラボレーション楽曲。
ラジオで一曲ずつ解禁されていく中で、純粋に一番好みだなと思ったのはこの曲だった。頭からずっとひとつひとつの楽器の音が全部粒立って聞こえるのは、一際音楽好きの大智くんのディレクションだって意識してるせいもあるかもしれない。けど、とにかくかっこいい。
彼は北村さんの歌声がめちゃくちゃ好きだということもあり、その歌声がめちゃくちゃ堪能出来る一曲。
GLIM SPANKYといえば特徴的なのはVo.松尾レミのハスキーな歌声とGt.亀本寛貴のギターフレーズだと思うが、DISH//の曲になってもその特徴がしっかり生きている感じ。変幻自在の北村匠海のボーカルがきちんとその世界観を体現していると思う。
単純に演奏するのが難しそうな曲なので、ライブでどうなってくるか今から非常に楽しみ。
12.バースデー
もう一曲、天才新井弘毅の新曲。これは『金色のコルダスターライトオーケストラ』の主題歌にもなっている。
新井さんのすごいところその2、こういうタイアップ曲に関してはその作品の世界観とDISH//の持ち味を同時に成立させてくるところ。『NOT FLUNKY』と『Seagull』でハロプロ的ノリ重視の訳わからん歌詞(褒めてます)と同じ人が書いた思えないくらいまっすぐな歌詞、タイプとしては『勝手にMY SOUL』も銀魂の主題歌です! って音符に書いてあるような作品だったので今回のコルダもこういう作品なんだ〜って名刺がわりに聴けるような一曲でもあるなあと。
あと、このアルバムの最後に『バースデー』というタイトルで、「勇気を出して踏み出した小さな一歩が 大いなる旅たちの始まり ハローハロー 声を上げて」で始まる曲が来るの、すごくない?! 大河ドラマ?!(?)
まだペーペーのわたしでも知っているような名曲をDISH//に作ってきた新井さんが、メンバーがしっかり関わって自分たちの意志を反映させてアルバムを作ったところにこの曲を贈るってあまりにも出来すぎている。『バースデー』て。DISH//の新しい始まりへの祝福以外のナニモノでもないじゃないですか。最高。
──総括
バンドなのに今まで自分たちで曲を作ってこなかった、というのは本人たちの弁。
もちろんそういうバンドって他にもいっぱいあると思うし、ましてやDISH//はそもそもバンドをやりたくて集まった人たちではなかったわけじゃないですか。それが、今は自分たちで曲やアルバムを作り上げるまでになり、「自信作」「名盤」とはっきりと口にしていること。それって本当にすごいことだと思うんですよ。今の彼らだからこそ作れた一枚、今の彼らじゃないと作れない一枚だなとしみじみ感じる。
人に持たせてもらったものではなく、自分の意思でギターを持ち、キーボードを弾き、ドラムを叩き、歌を歌うということの覚悟。そういうものがパンパンに詰まっていて、眩しい。
12曲全部がバラバラの色で、バラエティに富んでいるということもだけど、ひとつの系統に定まらないところが本当に彼らの持ち味で武器だと思うから、今後もずっとそのままでいて欲しいです。自分たちがその時にいいと思う音を鳴らし続けて欲しい。
10年目のDISH//の音を存分に楽しめる、必聴の一枚だと思います。
もしこの記事を読んで気になった人! 各種サブスクリプションサービスで好評配信中なのでぜひ聴いてみてね!
以上! 春ツアー楽しみすぎるね〜!!